すべての不幸のはじまり

朝、家を出るときのトイレは渋滞していた。両親、兄弟姉妹みなが順番に使用するからだ。帰りの私は、弟が運転する車で数時間かけて東京まで帰宅だ。帰りの途中で、高速道路のまんなかでトイレに行きたくなったら大変だ、もちろん私も、帰省先の家を出かける前にしっかりと家のトイレで用を済ませていた。

いや、正確には用を済ませるためにトイレには入ったが、トイレの中では大きいのは出たが、小さいのは何も出なかったのだが。私の後に、トイレを利用しようと姉が待っていた。まあ、でもそういう日もあるだろうということで特に気にすることもなく、私はトイレを出た。

弟の車の後部座席に乗って、助手席の父、運転席に座っている弟の運転で車は、家の駐車場を出ると、高速に乗って東京を目指して出発した。

車が東京行きの高速道路に乗ると、私は、おしっこがしたくなってきた。でも、車は高速道路にいま乗ったばかりだ。それほど、おしっこに行きたいわけでもなかった。しばらくは車は高速道路を走り続けた。それでも、家に到着するまで、ずっとおしっこが我慢できるわけではなかった。

「次のパーキングエリアでトイレに寄ってもらえるかな」

私は、弟に頼んで、次に出てきたパーキングエリアで車を停めてもらった。私は、パーキングエリアのトイレに駆け込み、用事を済ませようとした。しかし、自分の身体は確かにおしっこがしたくて、したくてたまらないのに、トイレにしゃがんでも、おしっこは一切出てこなかった。

「なんで、おしっこ出ないのだろう?」

それでも、ずっとパーキングエリアのトイレに座っているわけにはいかないので、いったんトイレを出てから車に戻った。私が車に乗りこむと、弟はエンジンをかけて再び車は出発した。車が走り出して、まもなくまた、おしっこがしたくなってきた。次のパーキングエリアで再び車を停めてもらう。そして。そこのパーキングエリアのトイレに駆け込む。しかし、やはり、おしっこは出なかった。

おしっこは出ないままに、また車に戻ってきて、再び出発する。そして、次のパーキングエリアでも車は停車し、トイレに駆け込む。しかし、やはりおしっこは出ない。

「紙おむつ、持っているけど・・」

父がバッグから自分の紙おむつを1枚取り出して手渡してくれる。私は、父からもらった紙おむつを手に持ってトイレに行き、紙おむつに着替える。

車に戻って出発する。今度は、紙おむつをしているので、どんなにおしっこに行きたくなったって、もう大丈夫だ。というか、どうせトイレに行ったって、おしっこは出ないのだろう。紙おむつをしているので、もらすことはないだろう。安心して走行中の車の後部座席で、真横に寝転がって安静にしていた。紙おむつのおかげでもらすことがない、というよりも、おしっこに行きたくて仕方ないにも関わらず、下半身はおしっこを出すことが出来ないので、もらすことが無かったというほうが正しかった。

車の中で、おしっこがしたいのに出ないので、だんだんお腹が苦しくなってきた。やがて、車は東京の実家に到着した。弟に荷物を持ってもらって、私はフラフラになりながら、実家のマンションのエレベーターを上がり、実家のトイレに駆け込んだ。しかし、おしっこは出ない。

「それじゃ、先に自分の家に帰ります」

弟がトイレの外から声をかけてきて、

「おつかれさま」

私は、トイレの中から表にいる弟に返事をした。結局、30分ぐらいトイレの中にいたが、おしっこは一滴も出ることなくトイレを後にした。

「今日は泊まっていったら?」

私は、東京の実家から東横線で横浜に行った横浜市内に住んでいる。明日はふつうに休み明けなので、会社があるから今夜じゅうに横浜の自宅に帰っておきたかった。しかし、お腹の痛みは、すぐに自宅に帰れる感じではなかった。

「ほんの少しだけ寝かせて」

私は、少し気分が良くなるまでほんの数時間だけ実家のベッドで寝かせてもらうつもりで、父がふだん寝ているベッドの隣の空いているベッドで寝かせてもらった。ほんの数時間眠るつもりが、結局朝まで起き上がることができずに、その晩は、実家の、父のベッドの隣の空いているベッドでずっと寝てしまった。寝ている間、私は夜中にお腹の痛みで大声をあげて叫んでしまっていたらしい。

「そんな大声で叫んだら、隣の人に何事か思われてしまうかもしれない」

父に言われて、自分が痛みに大声をあげていたことに気づかされた。このまま、父の隣で寝ていたら、私の大きな寝言で、父まで眠れなくなってしまうと思ったので、毛布を片手にリビングに移動して、リビングのソファに横になって朝まで眠った。

「きょう、会社に行けるのか?」

朝になって、父に聞かれた。昨日の長野から戻ってきたときよりは多少お腹の痛みは無くなっていた。それでも、さすがに満員電車に乗って、これから横浜まで戻り、会社に出かける気力は出なかった。

「会社にメールして、お休みすることを伝えた」

私は、会社にお休みするメールを打った後で、父に伝えた。父は、朝ごはんを何か食べに行こうかと誘ったが、ちょっと食事を口にできる体調では無かったので断った。朝のラッシュアワーの時間が過ぎるまで、しばらくここのリビングのソファでゆっくり休んだ後、自宅に帰って、きょうは家の自分のベッドでゆっくり休むと父には伝えた。

そして、朝のラッシュアワーの時間が過ぎると、フラフラの身体で東横線に乗って家にたどり着き、自分のベッドの中に潜り込んで眠りについた。

おなかが痛いにつづく