2回目の挑戦

「次こそは、おしっこ出るようにしなきゃ」

初めての外来での診察の後、私には、それ以外のことは全く考えられなかった。惜しくも、最初の外来診察では、クダを外しても、おしっこは全く出なかったが、その2週間は、忘れることなく常に、朝ごはんと夜ごはんの後には、ユリーフを1錠ずつ飲み続けてきたのだ。

「たまたま、まだ薬の効果が出なかっただけ」

そう、ただのそれだけだ。

次の2週間も、ちゃんとユリーフを朝晩飲み続けていれば、いくらなんでも、2週間後には、クダを外したら、おしっこは、ちゃんと出るようになるだろう。そう思っていた。

だから、その2週間も、ユリーフのお薬を飲み続けた。

そして、2週間が経った。その日の朝、前回、初めての外来診察の後に、イオンの薬局に処方箋を提出してもらったユリーフの入った袋の中を覗きこむと、もう残り2錠のユリーフしか残っていない。

「さあ、朝ごはんは食べ終わったし・・」

私は、袋の中の2錠のうち、1錠を手に取って、飲んだ。これで、もう袋の中には、あと1錠しか残っていない。今日、これから行く2回目の外来診察で、おしっこが出れば、この残り1錠は、もう飲まなくても良いのだ。というよりも、さすがに、4週間ユリーフを朝晩飲み続けているのだ。クダを外せば、おしっこも出るだろう。

「この最後の1錠は、余ってしまうな。どうしよう」

私は、袋の中を覗いて、最後の1錠を眺めながら考えていた。

「とりあえず、病院に行かなくては・・」

最後の1錠のことをボケッと考えていると、時間は、あっという間に過ぎてしまい、そろそろ家を出ないと、予約の時間に遅刻してしまう。

「行ってくるね」

愛猫に、お出かけの挨拶をしてから、家を出た。

相変わらず、この病気になってからの私は、歩くスピードが遅い。

普段ならば、10分ぐらいで歩ききってしまう道を、だらだらと1時間ぐらいかけて、病院にたどり着いた。

「なんで、遅いんだろう」

ずっと、自分の歩くスピードが遅いのは、下半身にへんなクダをぶら下げて、おしっこの袋を提げて、歩いているからと思っていた。もちろん、そのせいもあるのだろうが、なんとなく体調がやる気でないせいもあるのかなって感じだった。

「まあ、いいや。今夜は、もう寝てしまおう」

病気になってからの私は、確かにあまりやる気が出なかった。普段ならば、けっこう遅くまで起きていて、いろいろパソコンを開いて作業していたりするのに、病気になってからは、夜9時過ぎには、寝てしまうことも多かった。

「まあ、見逃し配信で見ればいいや」

楽しみにしていたテレビのドラマなんかも、見たいという気持ちよりも、寝たいという気持ちの方が大きく、眠ってしまうことの方が多かった。やはり、病気のせいで、身体も弱っていたのであろう。

「お願いします」

私は、病院に着くと、2階の泌尿器科の受付に、診察券と予約票を提出した。初めての外来のときとは違い、1階のエントランスホールで迷うこともない。病院の敷地内に入ると、真っ直ぐにエントランスホールを抜けて、2階へのエスカレーターを上がって、泌尿器科に直行していた。慣れたものだった。

「泌尿器科の予約ですね」

受付の看護師が、私の手渡した予約票と診察券を確認して言った。

「はい、15番の前で待っていれば良いですか?」

私は、看護師に言うと、看護師が頷いたので、前回の診察と同じように、15番の診察室の前にある廊下の椅子に腰かけて、順番を待っていた。なんだかベテランの患者になった気分だった。

「次の方、どうぞ」

診察室の中から先生に呼ばれて、部屋に入った。

「どうですか?」

「毎日、朝晩は必ずお薬を飲んでました」

私は、先生に答えた。

「体調は良さそうですか?」

「はい、特に変わりはないですけど・・」

「そうですよね。おしっこが出るようになっているかどうかは、外から見るだけでは、よくわかりませんものね」

そして、また隣の診察室で、クダを外してみて、おしっこが出るようになっているかどうか確認してみましょうということになった。

一度、15番の部屋を出ると、すぐ隣の診察室に移動する。そこには、前回のときと同じ看護師がいた。

「それでは、またクダを抜いて、おしっこが出るか確認しますので、ズボンを下ろして、タオルをかけて、ここに寝ていて下さい」

看護師は、部屋の奥に行ってしまった。私は、ベッドの脇のカゴに持っていたバッグを入れると、ズボンを半分下ろし、看護師からもらったタオルをかけて、ベッドの上に横になった。

「準備いいですか」

看護師が部屋に戻ってきた。また、前回同様、はじめにクダを抜く前に、お腹の中に水を入れられてから、クダを抜かれるのかと思っていたが、何やらモニターの載った台車を押してきた。

持ってきた台車を、私の寝ているベッドの脇に置くと、先生が入ってきて、モニターを確認しながら、何か冷たい金属のようなものを、私の下っ腹に当てられた。冷やっとする。

その金属を、私の下っ腹の何カ所かに当てられて、先生はモニターでチェックしていた。

「おしっこは、普通に問題なくクダから外の袋に出ているみたいですね」

先生は、そう言うと、クダの途中のところから水を私の体内に少し入れた。それから、クダを私の身体から引き抜いた。引き抜いたときの痛みをこらえていると、

「まだ、何も出ませんね」

先生が、そうつぶやいた。その声に、私は頭を少し持ち上げてみると、プラスチック製の花瓶のようなものを下半身に当てられていた。

「これを持って、おしっこが出そうになったら、この中に出してください」

先生に言われて、私は、自分の下半身に当てられたプラスチック製の花瓶を持たされていた。先生は、私に花瓶を持たせると、隣の部屋に行ってしまった。

その中に、おしっこが出ているのかよくわからず、少し花瓶を外して、中を覗きこんでみた。特に、何もまだ、おしっこは出ていないようだった。

「どうですか?」

先生と入れ替わりに、看護師が入ってきた。

「特に、まだ何も出ていないようです」

「そうですか」

「なんだか、この中よりも、トイレの方が出るような気がするのですが」

私は、花瓶を看護師に見せながら聞いた。

「いいですよ。また少し廊下を歩いてから、トイレで出しますか?」

「はい」

私は、花瓶を置くと、ズボンを履いて、バッグを持って診察室を出た。看護師と別れて、また病院の廊下をうろうろする旅に出た。

おしっこが出た!につづく


2回目の挑戦
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