放射性降下物、世界の氷河に蓄積 融解進むと「時限爆弾」に

原発事故や核実験に由来する放射性降下物が、世界各地の氷河に埋もれて存在しているとの研究結果が先週、発表された。この氷に覆われた残留物は気温の上昇で融解が進むと危険な時限爆弾となる可能性があると、研究者らは警鐘を鳴らしている。

チェルノブイリ原発、事故から30年

国際研究チームは今回、北極、アイスランド、欧州アルプス(Alps)、カフカス(Caucasus)山脈、カナダ・ブリティッシュコロンビア(British Columbia)州、南極を対象に、氷河の氷表面堆積物中に放射性降下物の存在の有無について調べた。

その結果、調査を行った17か所すべてで人工の放射性物質が検出され、またその濃度にいたっては他の場所の水準より10倍以上高いケースが多かった。英プリマス大学(University of Plymouth)で講師(自然地理学)を務めるキャロライン・クレイソン(Caroline Clason)氏は、「立ち入り禁止区域以外の環境で確認される最も高いレベルに達している場所もある」と指摘している。

大気中に放出された放射性物質は酸性雨として地表に降り注ぎ、その一部は植物や土壌に吸収される。

だが、放射性物質が雪として落下して氷の中で沈殿すると、通常より重い堆積物が形成される。そして、この堆積物が氷河内で集積すると核残留物が濃縮されるというのだ。

1986年に史上最悪の原発事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ(Chernobyl)原発は、セシウムを含む放射性物質の巨大な雲を大気中に放出し、その後数週間にわたり北欧全域で広範囲に及ぶ汚染を引き起こし、酸性雨をもたらした。

クレイソン氏は、AFPの取材に「(こうした)放射性の粒子は非常に軽いので大気中に巻き上げられるとかなり遠くまで運ばれる可能性がある」と話す。「チェルノブイリの時のように、雨として降下すればその後に洗い流される。なのでこれは単発の事象ともいえる。だが、雪として降ると氷の中に何十年ととどまり、気候に応じて氷が融解するにつれて下流に押し流される」

こうした事象による環境への影響が近年見られるようになった。スウェーデンでは、イノシシの肉が安全量の10倍以上のセシウムを含んでいることが明らかになっている。

核の遺産

クレイソン氏によると、研究チームは2011年の福島第1原発事故に由来する一部の放射性降下物も検出したという。だが、この原発事故に由来する粒子の大半はまだ氷成堆積物に集積していないと、クレイソン氏は述べる。

原発事故だけでなく、核実験によって生成された放射性物質も数か所の調査対象地で検出されている。

これについてクレイソン氏は、「核爆弾が開発されていた時代にさかのぼる1950~1960年代以降の核実験に由来するもの」と話し、「堆積物コアを採取すれば、チェルノブイリが起きた時に明らかな急増を確認できるが、大規模な核兵器実験が行われていた時期の1963年前後にも極めて明確な急増が確認できる」と説明した。

人為的な核活動による、潜在的に最も危険な残留物の一つがアメリシウムだ。アメリシウムはプルトニウムが崩壊する際に生成される。プルトニウムの半減期は14年だが、アメリシウムの半減期は400年を超える。

クレイソン氏は、「アメリシウムはプルトニウムより環境中で水に溶けやすく、より強いアルファ(放射)線を発する。食物連鎖に取り込まれることに関しては、どちらも有害だ」と指摘する。

そして、「これらの物質は、人類が大気中に放出したものの生成物だ。これは人類の核の遺産がまだ消えておらず、依然としてそこに存在することを示している」と強調した。(AFPBB News)


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