はじめての診察日

次の日の朝、目が覚めた。

「ごはんです」

いつも、朝ごはんは、出来るだけ病院に入院したときと同じ朝8時半に近い時間に食べるようにしているのだが、もちろん極力、病院の食事の時間に近い時間に食べるようにしているだけで、実際には「ずれていく食事時間」のように、ぜんぜん近くない時間に食事をしなければならない日も多いのだったが。

その日は、いつもよりも1時間も早くに朝ごはんを食べ終わって、朝のユリーフのお薬を1錠飲んだ。

「たぶん、病院まで歩いたら1時間ぐらい掛かるぞ」

その日は、病院を退院してから、はじめての外来での診察日だった。

普段だったら、うちから病院の手前のところにあるイオンまで歩いても15分と掛からない。しかし、今は、おしっこの袋をぶら下げて歩いているのだ。しかも、病人のせいなのか、せかせかと普通のスピードで歩くことが出来ない。退院以降、どうしても外に出るときは、ダラダラと遅いスピードで歩くしか出来なくなっていた。

診察の予約時間は、朝の9時だ。今の自分の身体で、うちから病院まで歩いたら、1時間ぐらいは掛かってしまうだろう。さらに、遅れたときの余裕を持っても・・かなり早くに、うちを出なければ、時間までに病院に到着出来なくなってしまうぞ。

そう思ったので、かなり早めに起きて、ダラダラと一生懸命できる限り急いで、パジャマから着替えて、朝ごはんを済ませたのだ。

「それじゃ、行ってきます!」

私は、愛猫に挨拶をして、予約時間の朝9時よりも、かなり早い時間に、うちを出発した。はじめての外来での診察日だ。いったい、どんなことをやるのだろうか?さっぱり見当もつかなかった。

「どこに行けば良いのですか?」

私は、予約時間よりも30分ぐらい早い時間に、病院に到着すると、1階の受付の窓口で、退院の日にもらった予約の紙を見せながら、尋ねた。

「この紙をお持ちでしたら、そのまま2階の泌尿器科の受付にお出し下さい」

受付の女性が、私に説明してくれた。

泌尿器科の受付って、いったいどこなのだろう?と疑問に思ったが、とにかく2階に上がってみれば、どこかわかるだろうと脇に付いていたエスカレーターで2階に上がる。

「あれ、ここの2階って、なんだか見覚えがある」

前に、入院していたとき、看護師と一緒に入院棟からスターウォーズの秘密基地みたいなエレベーターを使って、泌尿器科の先生に会いに来たところだった。

私は、そのときのことを思い出していた。

「確か、ここの廊下をまっすぐ行った一番先の15番の部屋に行って、そこの前で看護師と待っていたら、泌尿器科の先生に診察室の中から呼ばれたのだった」

そのときのことを思い出した私は、そのときと同じ一番奥の15番の部屋を目指して、歩いていた。でも、今日もまた、そこの同じ部屋とは限らないだろうと、途中で思った私は、たまたま、その途中にあった受付カウンターにいた看護師の女性に、聞いてみた。

私の診察は、またあの時と同じ15番の部屋で良かったみたいだ。しかし、そこへ行く前に、その受付カウンターで、診察券と予約票を提出するようにと言われた。

「診察券と予約票・・」

予約票は、ちょうどさっき1階で場所を聞いたときに見せるのに、手に持っていたので、すぐに提出できた。後は診察券だ。バッグの中を探って、お財布を取り出すと、お財布の中に収納してあるたくさんのポイントカードや銀行カードの中から、病院の診察券を探し出して提出した。

「あと、保険証を見せて下さい」

「保険証は、前回に見せましたけど・・」

私は、再び財布の中から自分の保険証を探し出しながら、受付の看護師に言うと、保険証は、月が変わる毎に、毎回提出するものなのだそうだ。

「ありがとうございます」

看護師は、私が手渡した保険証をコンピュータと確認し終わると、保険証を私に返しながら、言った。

「それでは、奥の15番の部屋の前でお待ち下さい」

看護師に指示されて、私は廊下を一番奥まで進み、15番の部屋の前にたどり着いた。まだ朝早いというのに、15番の部屋の前に行くまでの間の廊下に設置されているベンチには、たくさんの患者さんたちが腰かけて、診察の順番を待っていた。

私も、15番の部屋の前に設置してあるベンチに腰かけて、目の前の診察室から先生に呼ばれるのを待っていた。

「そういえば、入院中に、ここに泌尿器科の先生に診てもらうために来たときも、このベンチの、ここの場所に腰かけていたな」

あのときは、私が、ここのベンチの端っこに腰かけて、すぐ脇の、この壁際に一緒に付き添って、ついてきてくれた看護師が立っていたなと思い出していた。

採血検査につづく


はじめての診察日
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