アンテナの賠償

「誰か出てくる・・」

「隠れよう」

島の人たちが皆、山の頂上から街へと帰ってしまって、頂上には、ゆみ、祥恵に、晃子の3人だけになっていた。宇宙船の中から足音がして、誰か出てくるようだ。

「いったい、どうなっているんだ、全く」

宇宙船から出て来たのは、コクピットにいたガミラス人たちだった。

「おい。あれを見ろよ」

「アンテナがぐにゃんり曲がってしまっているではないか」

ガミラス人たちは、自分たちの宇宙船の上部に付いているアンテナが曲がっていることに気づいた。

「なんで曲がったんだ?」

「鳥かなにかが飛んできて、ぶつかったのか」

「鳥ぐらいでは、あんなにぐにゃんり曲がったりしないよ」

「じゃ、誰が・・」

「我々の催眠をまだ浴びていない地球人が、この島にはいるのかもしれないな」

「それじゃ、そいつらが宇宙船のアンテナを壊したということか。あんなに曲がってしまっているけど、修理できるか」

ガミラス人たちは、忌々しそうに折れ曲がっているアンテナを睨みつけていた。

「とりあえず、アンテナを曲げたやつを探して捕まえないと・・」

「それは、俺たちで探すから」

リーダーらしきガミラス人が、他のガミラス人たちに命じた。

「お前たちは、壊れたアンテナを早急に修理して、早く島の地球人たちに再度、催眠光線を浴びせて、冷凍保存し直せ」

ガミラス人たちは、アンテナを壊した地球人を探しに行くグループと壊れたアンテナを修理するグループの二手に別れた。アンテナを壊した地球人を探すグループは、島内探索のために山を下っていった。アンテナを直す方のグループは、修理道具を取りに、いったん宇宙船の船内に戻った。

「船内には、あまり大がかりな修理道具が無いな」

「仕方ないよ。あるもので応急処置して、残りはガミラス星に戻ってから、本星でちゃんと修理しよう」

「応急処置では、島全体に催眠光線が届くかどうかわからないな」

「やるだけ、やってみよう」

ガミラス人たちは、修理道具を抱えて、宇宙船の屋根の上によじ登った。壊れたアンテナの周りに、修理道具を広げると、アンテナの修理を始めた。

「おい、そっちの道具を取ってくれ」

「はいよ」

修理していたガミラス人が、脇にいたガミラス人に頼んだ。脇にいたガミラス人は、修理道具の中から言われた修理道具を取り出し、道具を手渡した。

「それが終わったら、こっちも手伝ってくれるか」

アンテナを1人のガミラス人が押さえ、固定して、もう1人がネジを回して修理している。

「それにしても、早くガミラス星に帰りたいよ」

「ああ、俺もだ」

「この地球って星は、デスラー総統は魅力的な星だと言うけど、俺には、なんとなく住みやすそうな星には思えないんだけどな」

「お前もそう思うか。実は、俺もなんだ。空気の濃度が、俺たちガミラス人にとっては、なんとなく重すぎるような気がするんだ」

「空気は、俺はそれほどとも思わないが、ほら、あの海沿いの、沿岸を飛んでいるウミネコとか呼ばれる白い鳥たち、あれが苦手だな」

ガミラス人たちは、宇宙船の屋根の上で、アンテナの修理をしながら、愚痴を言っていた。

「確かに、あのウミネコは苦手だ」

「だろう。あいつら、俺たちの腕に噛みついてくるんだ。なんだろうな、俺たちガミラス人の青い肌が、よほど美味しそうに見えるのか。ムシャムシャ食いついてくるよな」

「ああ、ミカエル。彼なんか両腕を食べられてしまって、腕が無くなってしまったものな」

「ああ、全くだ。銃で撃ち殺そうとしても、あいつらウミネコは素早いし、飛べるから、すぐに交わされてしまう」

「もし、あのウミネコたちが宇宙船の中に侵入してきたら、俺たち皆、地球を侵略する前に、ウミネコたちに滅ぼされるかもな」

「それは、ちょっと言い過ぎだろう」

ガミラス人たちは、雑談しながら、アンテナの修理していた。

「ね、聞いた?」

宇宙船からガミラス人たちが出て来たときに、急いで近くの茂みの中に隠れた祥恵たちだった。祥恵は、近くに一緒に隠れていた晃子に声をかけた。

「ええ。アンテナを壊した人のことを探し出しているとか」

「あたし、捕まるの?」

それを聞いて、ゆみは祥恵に質問した。

「そうかもね」

「でも、アンテナを壊したのお姉ちゃんだよね。あたしは、石を投げたけど、当たらなかったんだもん」

「そうだね」

祥恵は、ゆみの頭を軽く指で突いた。

「とりあえず、いったん退却しましょう」

晃子は、2人を誘って、ガミラス人たちに見つからないように、そっと茂みの中から抜けだし、山を下った。祥恵やゆみも、晃子について山を下りていく。

「お姉ちゃん」

ゆみは、山を歩きながら、祥恵に声をかけた。

「なに」

「今日って、本当はもう学校始まっているよね」

「そうね」

「あたしたちって、ずる休みになるのかな」

「そんなこと言っても仕方ないでしょう。だって、島から脱出できないのだから」

「そうだけど」

「お母さんが、ちゃんと学校には事情を説明してくれているわよ」

「お母さんか。ホテルに戻ったら、お母さんのところに電話してあげようよ」

「そうね。確かに、今の現状を、お母さんたちにも報告しておかないと心配してしまうものね」

2人が話していると、

「シッー、静かに」

前を歩いていた晃子が、こちらに振り返って言った。2人は、緊張した様子で、晃子の側に行き、静かになった。

「あれ」

晃子の前、前方にガミラス人が立っていた。このままだとアンテナを壊した犯人として捕まってしまうのか。

しかし、目の前のガミラス人は、こちらには向かってこなかった。いや、向かってこれない事情が、向こうにはあったのだ。

ガミラス人の足元をみると、何匹かのウミネコたちが群れていて、ウミネコたちは、そのガミラス人の履いているズボンを嘴で突っついて破いて、ガミラス人の青い肌した足に噛みついていた。ガミラス人の足は、半分以上がウミネコたちに食べ尽くされていた。

ゆみたちに向かってきたくても、足が無いので、ゆみたちの方には来れないのだ。最も、ガミラス人たちには、まだ、アンテナを壊したのが、ゆみたちだということはばれてはいなかった。

「助けてくれ・・」

そのガミラス人は、ゆみたちの方を恨めしそうに眺めていた。そんなガミラス人は、足だけでなく、手も、胴体も、頭までもウミネコたちに食べ尽くされてしまって、動かなくなってしまっていた。

ガミラス人を食べてしまったウミネコたちは、倒れて動かなくなっているガミラス人の側で食後の毛繕いしていた。

ギャアーン

ウミネコたちが毛繕いしていると、上空で別のウミネコたちがなんか騒いでいた。その声に答えるように、毛繕いしていたウミネコたちが一斉に飛び立った。

飛び立ったウミネコたちは、上空のウミネコたちと合流すると、沿岸の岩場で、アンテナを壊した犯人を捜していた3人のガミラス人のところへと急降下した。

そして、ウミネコたちはガミラス人たちに飛びかかると、あっという間に3人のガミラス人たちを食い尽くしてしまっていた。

「すごい食欲」

「本当ね」

祥恵とゆみ、晃子は、ウミネコたちに食べられてしまっているガミラス人たちのことを眺めていた。

毛繕いから飛び立って、ガミラス人たちを食べ尽くしたウミネコたちは、さすがにお腹がいっぱいになって、満足したのか、また岩場でのんびり毛繕いしていた。

が、上空からガミラス人たちに飛びかかったウミネコたちは、まだお腹が満腹でないらしく、次の獲物を探して、また上空に飛び立っていた。上空から、ほかにも青い肌のガミラス人がいないか探していた。

「なんで、あたしたちのことは食べないんだろう?」

「地球人は、ウミネコにとって、きっと食料ではないのね。ガミラス人は、よっぽどウミネコたちにとって美味しいんでしょうね」

祥恵は、ゆみに答えた。

「いっそ、ウミネコたちが、ガミラス人を皆、食べてしまってくれたら良いのにね」

「確かに」

祥恵は、晃子に答えていた。

「さあ、ホテルに戻って、体制を整え直しましょう」

3人は、再びホテルに戻るために、山を下り始めた。


アンテナの賠償
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