バイバイ、ガミラス

「なんとか間に合ったかな・・」

祥恵は、港を出て、街を離れて、再び山の頂上まで走ってくると、息をハアハアさせながら、つぶやいた。一緒に走ってきたゆみも、晃子も息を弾ませていた。

ガミラスの宇宙船は、島の周りをぐるっと1周すると、まずは沿岸上に住んでいる島の人たちに、催眠光線を浴びさせていた。再び、ガミラスに催眠光線を浴びさせられた島にいる人たちは、また目がうつろな表情になり、吸いよせられるように島の一番頂上、山の上を目指して歩き出していた。走ってきた山の上にやって来た祥恵たちに比べると、そのスピードはうつろで遙かに遅いスピードだった。

「皆も、こちらに上がってくるよ」

祥恵は、山の頂上から島を見下ろして、島の人たちが登ってくる姿を発見していた。

「でも、彼らは、自分の意志で登ってきているわけではなく、催眠光線でガミラスに操られて、登ってきているだけだけどね」

晃子も、頂上から見下ろしながら、つぶやいた。

島の沿岸上にいた人たち全てに、催眠光線を浴びせ終わると、ガミラスの宇宙船も、再び山の頂上に戻ってきていた。

しかし、それより少し早くに、頂上に到着した島の人たちは、頂上に宇宙船がいないので、目的地不明で頂上の頂きをぐるぐると回っていた。しばらくして、ガミラスの宇宙船が頂上に着陸し、宇宙船のハッチを大きく開いた。すると、今まで頂上をぐるぐる回っていた人たちが皆、そのハッチから宇宙船の船内へと入っていった。

「皆、入っちゃった」

「ああやって、船内に入った人たちは、また中のカプセルで冷凍保管されてしまっているのだろうね」

晃子は、つぶやいた。

頂上に上がってきている島の人たちは、次々へと宇宙船の中へと吸い込まれていた。せっかく、祥恵たちが救い出してあげたのに、このままでは、また島の人たちは皆、ガミラスに捕らわれて、冷凍保存されて、ガミラス星に連れて帰られてしまうことだろう。

「あんたは、何をやっているの」

祥恵は、ゆみに聞いた。ゆみは、山に登ってくる途中、沿岸の岩場で見つけたウミネコたちを一緒に、ここへ連れてきていた。

ガアガアガアガア

ウミネコたちは、3人の周りで大騒ぎ、大合唱していた。

「ね、今ふと思ったんだけどさ」

晃子は、祥恵に言った。

「え?」

「もしかして、宇宙船って、島の周りに住んでいる人たちには、催眠光線をかけたじゃない。だけど、まだ島の中央部、ユニバーサルスタジオやホテルのあるところには、催眠光線をかけていないよね・・」

「確かに!」

祥恵は、晃子に言われて気づかされた。

「ってことは、ユニバーサルスタジオやホテルにいる人たちは、まだ正常ということだよね。ってことは、彼らと協力して、一致団結すれば、ガミラスたちを島から追い出せるかもしれないってこと」

祥恵は、晃子に言った。

「いや、それは無理でしょう。私たちが、ホテルやユニバーサルに戻る前に、沿岸上の島の人たちは、宇宙船の中に戻ってしまうでしょう。そしたら、きっとガミラスの宇宙船は、島の中央部にも、催眠光線を発射するよね。そうすれば、ユニバーサルも、ホテルの人たちも、ううん、それどころか私たちまでもが、催眠光線で操られてしまうよ」

「それは大変じゃない!ここから逃げなくちゃ!」

祥恵は、晃子に叫んだ。

「そうだよね」

2人は、ゆみを連れて、再び今度は山を下って、島の沿岸へと逃げようとしていた。

「今からじゃ、沿岸までなんて間に合わないよ」

ゆみは、祥恵に掴まれた手を振りはらって、祥恵に言った。

「じゃ、どうする気よ?」

「中に逃げましょう」

ゆみは、祥恵と晃子、さらには、自分の周りを飛び回っているウミネコたちを連れて、目の前に着陸しているガミラスの宇宙船の中へと逃げこんだ。宇宙船には、催眠光線で吸い込まれている島の人たちが、船内へと誘導されていた。その人たちに紛れ込んで、船内に入ってしまうことは簡単にできた。

ゆみたちが宇宙船の中に入った後、島の催眠光線で操られている人たちも全員、頂上に到着して、船内に導かれていた。彼らが全員、船内に入ってしまうと、ガミラス宇宙船の上部に付いている応急処置されたアンテナから、弱々しいオレンジ色の光が島の中央部に向かって発射された。

催眠光線は、島の中央部にいる人たちに浴びせられて、今度は、その人たちが頂上の宇宙船に向かって、誘導されていた。

「団体様のお着きだね」

催眠光線で誘導されてきた島の人たちは、宇宙船の船内に入ってくると、黙って自ら、部屋に置かれている透明チューブの中に入った。島の人たちが透明チューブの中に入ると、自動で透明チューブの入り口は閉まって、白い液体をチューブの中に充満させ、中の人たちは、コチコチに固まって、冷凍保存されてしまっていた。

「皆、コチコチだ」

透明チューブの部屋の奥で、戸棚の陰に隠れながら、島の人たちの行動を見守っていたゆみが、祥恵たちに言った。

「せっかく助け出したのに、また冷凍か」

祥恵も、晃子も残念そうにつぶやいていた。

以前に、宇宙船の中に入って、島の人たちを助け出したときは、昼間でガミラス人たちの多くは、島内観光か、島の様子を偵察に行っていたのか、宇宙船の中には、ガミラス人の姿は、どこにもいなかったが、今は夜中で、宇宙船の中にガミラス人たちも多く残っていた。

彼らは、島の人たちを解凍して逃がしてしまったゆみたちのことを憎んでいることだろう。もし彼らに見つかったら、ゆみたちは、いったい彼らにどうされてしまうことか。

「あ、地球人がいるぞ!」

1人のガミラス人に、戸棚の奥に隠れていたゆみたちが見つかってしまった。そのガミラス人の声に、一緒に隠れていたウミネコたちも、ガアガアと鳴きだしていた。その声に、ほかのガミラス人たちも、やって来た。

「なんだ、地球人だ」

「あいつら、催眠光線を浴びていないのか」

ガミラス人は、ゆみ、祥恵、晃子のことを睨みつけていた。

ゆみたちも、キッとガミラス人のことをにらみ返す。だが、ガミラス人たちは、腰に拳銃を提げている。中には、腰のホルスターから拳銃を取り出して、ゆみたちに向けて照準を合わせているガミラス人までいた。ゆみたちは、もちろん拳銃はおろか、武器なんて何も持っていない。

そして、武器を持っているガミラス人たちは、ゆみたちのところに駆けつけてくる。ゆみたちは、部屋の奥に隠れていたので、後ろには、どこも逃げ場など無かった。多勢に無勢で、あっという間にガミラス人たちに・・

というわけでは無かった。

確かに、拳銃を手にしていたガミラス人たちは、ゆみたちのところに向かってきたのだ。向かってきたのだったが、

「皆、さあ、ごはんよ」

ゆみは、自分の周りでガアガア騒いでいるウミネコたちに向かって、こちらに向かってくるガミラス人たちのことを指さしたのだった。

「召し上がれ」

すると、ウミネコたちは、ゆみに言われて、一斉に向かってくるガミラス人たちの手足に噛みついたのだった。ガミラス人たちの青い肌をムシャムシャと美味しそうに食べていた。

「うわっ、助けてくれ」

手足をウミネコたちに食べられたガミラス人たちは、その場に倒れ込んで、ウミネコたちに全く食べられないゆみたち地球人のことを恨めしそうに眺めていた。

やがて、ウミネコたちに食べられてしまったガミラス人たちは、床に倒れたまま動かなくなった。普段、沿岸の上空を飛んで、ときには海の中に潜って泳いだりしているウミネコたちの運動量は半端なかった。運動量だけではない、食欲も半端なかった。

まだ、お腹を空かしているウミネコたちは、さらに後から部屋にやって来たガミラス人の手足にまで噛みついて、食べ尽くしていた。これはたまらない、残ったガミラス人たちは一斉に、船内の奥へと逃げ出した。そのガミラス人たちを、ウミネコたちがガアガアと追いかけていく。

「さあ、今のうちよ」

ゆみたちは、ガミラス人がいなくなったので、透明チューブの中で冷凍保存されている島の人たちを、解凍し始めた。今度は、一気に解凍するのではなく、ゆっくりと徐々に、徐々に解凍した。

なので、冷凍にされていた島の人たちの記憶が飛んでしまうことも無かった。解凍され、助け出された島の人たちは、ゆみたちの周りに集まり、感謝の言葉をかけていた。

前回の解凍は、カチカチのアイスクリームよろしく、カチカチの肉まんを、一気に蒸し器でふかふかにふかすごとく、解凍してまわったので、解凍と同時に、島の人たちの記憶まで飛んでしまったのだろう。

「皆さん、この中にいると、またいつガミラス人が戻ってくるかわかりません。宇宙船から脱出し、逃げ出しましょう」

晃子と祥恵が、周りに集まってきた島の人たちに指示した。

「そうだ、逃げなくては!」

島の人たちは、祥恵や晃子に言われて、宇宙船の外に飛び出すと、山を下りていってしまった。

「さて、また催眠光線をかけられないように、ぶっ壊そうか」

宇宙船のすぐ側に残っていた祥恵は、晃子とゆみに言った。そして、宇宙船の上部に飛び出しているアンテナに向かって、地面に落ちていた大きめの石をシュートするのだった。

宇宙船の上部に付いていたアンテナは、祥恵の投げた石が当たって、今度は完全にポッキリと折れてしまっていた。折れたアンテナは、そのまま地面に落下し、祥恵たちのすぐ目の前に落ちた。

「こんなもの、いらない!」

祥恵は、落ちてきたアンテナを拾い上げると、森の中に投げ捨てた。

「これで、アンテナを直すまでに、かなりの時間を要すよね」

晃子は、祥恵が森の中に投げたアンテナを見送って、言った。しかし、ガミラス人たちにとって、もうアンテナなどどうでも良くなっていた。

ウミネコたちから逃れたガミラス人の一部は、船内上部にあるコクピットまで逃げこんだ。コクピットの部屋の中に入ると、ウミネコたちが中に入ってこれないように、入り口のドアをしっかり閉めた。

「こんなのたまったものではない」

「とっととガミラス星に帰ろう!」

コクピットの中に逃げこんだガミラス人たちは、宇宙船のエンジンを始動すると、開いていたハッチを閉めて、そのままウミネコたちを船内に閉じこめたまま、上空に飛び立った。

「このまま、ガミラス星に帰ったら、サンプルとして持ち帰る地球人の採取が出来ていないので、デスラー総統に怒られますよ」

「そんなこと知るか!」

一刻も早く、ウミネコたちの恐怖から逃れたいガミラス人は、全速力で宇宙船を上空に飛ばすと、地下都市から地上へと出て、そのまま宇宙へと飛び立っていた。宇宙へ出ると、ワープを何度も繰り返して、自分たちのガミラス星へと向かうのだった。


バイバイ、ガミラス
※こちらの特集記事をスマホでゆっくり読む