前立腺肥大症

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは、良性前立腺腫大に尿道閉塞、下部尿路症状が絡み合った複合的な臨床像です。前立腺肥大症は、前立腺の病気のなかでもっとも多くみられる病気です。

一般的に広辞苑、辞書などで引くと、上記のような説明がされていますが、言葉が専門的すぎてややわかりづいですよね。もう少しかみ砕いて説明すると、 人は、おしっこをするとき、お腹の中から身体の外に向かって排出します。おしっこは、外に排出されるとき、臓器から尿道を通って尿(おしっこ)の出口から排出されます。

おしっこは、尿道を通って身体の外に排出されるのですが、この尿道の出口付近に、ちょうど高速道路出口にある料金所のように、尿道の出口手前辺りのところで尿道の通路を取り囲むようにして、前立腺という臓器があります。おしっこは、その前立腺の中央を通っている尿道を通り抜けて、出口から身体の外へと排出されています。

この前立腺は、加齢とともに年々少しずつ大きくなっていきます。だいたい80歳ぐらいまで大きくなり続けていくと言われています。尿道の周りで少しずつ大きくなっていく分には特に問題はないのですが、あまりに大きくなりすぎると、前立腺の中央を通っている尿道が押しつぶされて通路が狭くなってきてしまいます。

前立腺が大きくなりすぎて、尿道、おしっこの通路が狭くなり、大きな前立腺に圧迫されてしまうと、尿道閉塞といって、尿が出にくくなってしまいます。トイレの回数が多くなったり、尿をした後にすっきりしない、などという自覚症状(下部尿路症状)が出るようになります。それでも、尿が出にくいというだけで、一応おしっこが体外に出ている間は良いのですが、大きくなった前立腺が完全に尿道を塞いでしまい、全くおしっこが体外に出なくなってしまうようになる場合があります。

このように排尿に関連する症状が出始めると、おしっこがお腹の中に貯まってしまい日常生活にも支障をきたすようになります。こうなると適切な治療が必要になってきます。

※しかし、中には前立腺腫大があっても症状がみられない人もいる場合があります。

前立腺肥大症の主な症状

前立腺肥大症になると、起こる主な症状は下記の通りです。

・尿が出にくい、出にくくなる
・尿が貯められない
・尿が出きらない
・尿がまったく出なくなる(閉尿)

左の写真は、前立腺が加齢により少しずつ大きくなってきたときの参考写真です。大きくなってきたとはいえ、狭いながらもまだ尿道に余裕がありますから、多少出にくいとしても、おしっこは体外に排出できます。

3番目の「尿が出きらない」までは、症状があらわれたとしても、症状と共存しながらも、まだ日常生活を続けていくことは可能です。

右の写真は、前立腺がかなり巨大なまでに大きくなってしまった参考写真です。

こうなると、尿道が完全に前立腺によって塞がれてしまい、尿閉、尿がまったく出なくなってしまいます。

体外に排出できなくなった尿が、ずっとお腹の中に停滞、蓄積されていくことになります。蓄積された尿によって、お腹、おへその下辺りの下半身が張ってくることによって、お腹が苦しくなり日常生活を続けていくことが出来なくなってしまいます。

さらに恐いのは、大きくなった前立腺の中に、前立腺ガンというガン(悪性の肉腫)が混じっていることです。肥大した前立腺の中にガンが混じっていると、ほかの臓器への転移も危惧されるため、手術で摘出するしか方法がなくなってしまいます。

前立腺肥大症の治療方法

では、前立腺肥大症は、どのように治していったら良いのでしょうか。

1)導尿カテーテルによる治療

大きくなった前立腺により、尿道を圧迫されて、おしっこが排出できなくなった場合、お腹の中に貯まったおしっこにより、お腹が張ってしまいます。

まずは、お腹の中に、貯まったおしっこを排出し、おしっこが体内に貯まらないようにすることが先決です。

導尿カテーテル(左記写真)という長いゴムホースのような管の先に、プラスチックの袋が付いたものを使用します。その管の先を尿道の中に通すことにより、お腹の中に貯まったおしっこが管の中を通って、体外に排出できるようになります。前立腺が大きい間は、この導尿カテーテルを身体に取り付けたまま、日常生活を送るようになります。

2)お薬による治療

まずは、お薬を服用することで治療します。
前立腺肥大症を治療する薬としては、主に「α1受容体遮断薬」や「抗男性ホルモン薬」を使用します。

α1受容体遮断薬(α1ブロッカー)
交感神経が興奮して強く収縮した「前立腺と尿道の筋肉の緊張」をゆるめて、尿を出しやすくするお薬です。朝晩、食後に1錠服用します。
代表的な薬品名:ユリーフ

抗男性ホルモン薬
前立腺肥大症の発症に関わっている「男性ホルモン」の作用を抑えて、前立腺を小さくしていくお薬です。効果は人により変わりますが、服用から効き始めるまでにだいたい6ヶ月ぐらい掛かります。
1日1回朝食後に1錠服用します。
代表的な薬品名:アボルブ

漢方薬、植物エキス薬剤など
前立腺の炎症を抑えたりして、前立腺肥大症の症状を和らげます。

お薬を服用し始めたら、だいたい2週間に1度ぐらいの割合で通院し、導尿カテーテルを抜き差しし、前立腺が小さくなったかどうか、尿道をおしっこが通るようになったかを確認します。

3)外科的な治療

だいたい1~2ヶ月ぐらいお薬を服用しても、おしっこの出が改善しないようならば、大きくなった前立腺を手術で切除することを考えだしても良い頃です。

手術といっても、前立腺肥大症の手術はお腹にメスを入れて切ることは、まずありません。尿道の出口、おしっこの出るところから先っぽにレーザーの付いた内視鏡を挿入し、前立腺の外側(皮の部分)と内側(本体)の間にレーザーを照射することで、まるでミカンの実を外側の皮から剥がすようにして、前立腺を切り取ってしまいます。(最上部写真参照)

切り取った前立腺は、作業のしやすい広いところ、膀胱内に移動します。膀胱内で、今度は内視鏡の先に付いた攪拌器(ミキサーのようなもの)で切り取った前立腺を細かくしてから、体外に取り出します。

PSA検査(針生検)
大きくなった前立腺を、手術で切除することを決断したら、まずPSA検査(針生検)にて肥大化した前立腺の中に悪性のガンが混じっていないかを確認します。

※悪性のものが混じっていた場合、前立腺ガンの手術になります。

PSA検査(針生検)は、お尻の穴から挿入した器具にて、前立腺内に悪性のガンがないかを確認します。

前立腺切除(HoLEP)手術

PSA検査(針生検) にて、肥大化した前立腺に悪性腫瘍(前立腺ガン)がないことを確認できたら、いよいよ手術になります。

通常の前立腺の大きさは、だいたい20gぐらいです。
肥大した大きさが90gぐらいだと、例え前立腺が圧迫してきたとしても、まだ尿道には余裕があるかもしれません。お薬を服用することで、前立腺を小さくすることも出来るかもしれません。
肥大した大きさが220gぐらいになると、前立腺の大きさは巨大すぎます。こうなると、もはや尿道に、おしっこが通り抜けられる余裕もありません。お薬で小さくするのにも時間が掛かってしまうので、手術で切除してしまったほうが良いでしょう。

手術は、だいたい1日、3時間~8時間ぐらいで終わります。

手術前夜

手術のときは、手術前日の夜から病院入りします。その日の夕食は病院の食事を食べ、病院で一泊します。夕食の際にOS-1というドリンクが500mlペットボトルで2本出ますので、そのドリンクを次の日の朝までゆっくり時間をかけて全部飲みきります。

※OS-1ドリンクを2本飲みきることで、手術前の点滴をしなくて良くなります。

手術当日

手術当日の朝は、朝食抜きです。血栓防止のため、着圧ストッキングを履いてから看護師と共に手術室に向かいます。手術台の上で麻酔をかけられると後は意識はありません。麻酔で眠っている間に、医師たちが、あなたの肥大した前立腺を切除してくれます。

手術後、ベッドに寝かされたまま、自分の病室に戻されます。術後は、点滴と導尿カテーテルを付けられています。その日の夕食もありません。ベッドから起き上がることもできません。あきらめて、手術当日は、ゆっくりベッドでお休みください。次の日の朝の朝食が、とても美味しく感じられます。

※OS-1ドリンク2本は、手術前の点滴をしないためのものです。
※術後の点滴は、必要になります。

術後2日

次の日の朝には、食事もできますし、術後に付けられた点滴も外してもらえます。それから2日間は、導尿カテーテルを付けたまま、病院での生活となりますが、食事もできますし、お風呂も入浴できます。談話室でテレビを視たり、PCがあれば、ネットをすることだってできます。希望があれば、おやつに院内のカフェで甘いものを頂くことだって可能です。特に不自由なことはありません。

術後3日(退院前日)

術後3日目の朝、いよいよ導尿カテーテルも外してもらえます。
点滴も、導尿カテーテルも自分の身体にくっついていたものは全て無くなり、晴れて自由の身です。1)の導尿カテーテルによる治療以来、お薬を服用している間など、ずっと導尿カテーテルを通しての排尿でしたから、久しぶりの管に頼らない自力での排尿となります。

導尿カテーテルを外されたら、次の日の朝までは、出てきたおしっこはカップに排尿して、あなた専用の大きなトレイに保管します。あなたが排尿するおしっこの量を経過観察します。

退院日

問題が無ければ、次の日の朝に退院です。


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